つんでれんこの昔話とこれから

目次

はじめに

つんでれんこの初版は2009年6月20日に作成されました。つまり13年以上前です。当時おぎゃーと生まれた人が今はもう中学生です。なんてこった。だいぶ昔なのでさすがに当時の記憶が薄れてきました。せっかく活動も再開したことだし忘れないうちにちょっとだけ昔話をします。みんな好きだよね、開発秘話とか。僕も大好きです。

なんでこんなものを作ったのか

当時のまどやは重度のニコ厨で、ランキングから新着までニコニコの動画を漁っていました。そんなある日偶然MMD動画が目にとまりました。最初に見たときの衝撃は今でもよく覚えています。MikuMikuDanceというツールの認知度は現在はかなり高いと思いますが、2008年に初版が登場したばかりだったので当時はMMD杯に出品された動画を全部視聴するなんてこともまだ可能だった時期でした。

そんなMMD動画ですが、エンコード事情で細部が潰れてしまっているものをよく見かけるようになりました。そういうのを見かける度に、SNSなどを通じて連絡が取れる場合はエンコード時のオプションをこうやって変えると少しマシになると思いますというようなことを投稿者に伝えたりしていたんですね。今考えると随分と押しかけ迷惑な野郎だなあと思うわけですが、素敵な動画をもっと綺麗な画質で見たいというのが大きなモチベーションになっていたんでしょう。

当初はそれで十分だったんですが、日に日に投稿される動画は増えていくわけで、いちいち投稿者に連絡を取っていたらキリがないわけです。そこで、じゃあMMD動画作成者向けに、ツールのインストールからエンコードまで、何から何まで手取り足取りやってくれるバッチツールを作ってしまおうと考えました。実は当時はプログラミングほぼ未経験だったのに、怖いもの知らずですね。よく分かってなかったおかげでプログラミング言語の選択をミスり、その後13年以上後悔し続けることになります。

半分勢いで作ったものの、ほどよいジョークソフト加減と見た目以上の面倒見の良さがウケたようで、普段交流のあったMMDerからは結構な好評をもらいました。IRCやにゃっぽん(今はサ終したSNSです)で一部の人に配る予定が、調子に乗って一般公開する流れになり、あれよあれよという間に紹介動画も作られ、2009年7月14日にニコニコ動画への投稿を通して、声に出して読むのも憚られる世にも奇妙なものが世に解き放たれたのでした。世も末です。

1.5GBの悲劇

その後Mac版も出したりYouTubeに対応したりもしながら順調にユーザを増やしていき、ニコニコ動画にアップロードされる動画の8割くらいはつんでれんこが使われているんじゃないかと噂されるくらいになりました(要出典)。つんでれんこもまどや自身も天狗になっていた時期ですが、2016年8月18日に事件が起きます。いわゆる「1.5GB再エンコード問題」です。詳しくはニコニコ大百科の記事に譲りますが、実はサーバの再エンコードが実装されるんだろうなあという予測はついていました。なので「ついにつんでれんこもオワコンかー」と思っていたんですね。そもそもサーバで再エンコードされない仕様の100MB(もしくは40MB)の動画を生成するために作られたのがつんでれんこなのです。どうやってもサーバ側で再エンコードされるなら別にそんなにシビアにエンコードする必要はなくなるわけです。

ところがどっこい、蓋を開けてみれば新仕様はめちゃくちゃややこしいものでした。解像度だのビットレートだの動画の総時間だのに気をつけないとかなり低画質な再エンコードをされてしまうことが徐々に判明していきます。結局、再エンコードされない条件を満たすためにつんでれんこを使っていたのが、綺麗に再エンコードされる条件を満たすためにつんでれんこを使うことになっただけなのでした。そしてその条件を満たすためにそれまで以上にあれこれ細かい調整が必要になり、更新をやめるどころか約3ヶ月の間に20回近くバージョンを更新し続けることになるのでした。仕事かな?

その後最低限ここまでやれば大丈夫なはずだというところまでなんとか持っていき、結局2018年4月27日になって完結版を出して、やっと更新を終えることになりました。めでたしめでたしです。

つんでれんこのこれから

さてここまでが前置きで、ここからが本題です。役目を終えたと思われるつんでれんこをこれからどうするか。実はいつかやりたいなあと思いつつ、ずっとできなかったことがまだあります。

そう、GUI化です。

つんでれんこはCUIです。CUIだからこそあの味が出ているのも事実ですが、開発当初からGUI化はずっと話題になっていました。それにやっと取りかかろうと思っています。仕事が忙しくてなかなか思うように進めないと思うのですが、気長に待っていただければと思います。その他にも以下のような点で改善の余地はまだまだ残っています。こちらもGUI化と一緒に進めていく予定です。

  • クロスプラットフォーム
  • 64bitネイティブ対応
  • 口調選択機能
  • 通知
  • 対応サイトの追加

初心に返って

つんでれんこについて昔からよく「なんでツンデレなの?」と聞かれます。今では誰でも簡単にエンコードできる環境が整っていますが、昔は綺麗に仕上げようとすると知識も要求されたし、エンコード時間を丸一日確保する必要もあったし、何時間もかけて出力されたファイルが40.1MBで泣きそうになったり。なかなか言うことを聞いてくれないツンツンしたやつで、最終的にデレてくれるまであの手この手を使って攻略していく過程をエンコーダに重ね合わせた、というのが理由です。

開発当初から、投稿者を苦しめがちなエンコードという過程を、投稿者にとって楽しい時間にしたいという目標を常に持っていました。ですので、つんでれんこがただのツールとしてだけでなく、キャラクターとして長いこと愛され続けたのは作者冥利に尽きます。初心に返って遊び心を忘れず、もうつんでれんこを使わなくなった人も多いと思うけど、そういう人たちにもう1回くらい振り返ってもらえるようなものにしたいものです。